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シナリオ 3

53. スペース・シャーク・倉庫

 苛性ソーダのカプセルのバスにつかってご機嫌のクラック。全身をまんベんなくタワシでこすっている。
 一方、ピンチョがほうきを手に、倉庫のあちこちを払っている。
 壁から床から、ついでに何個か置いてある、クラック用の苛性ソーダのカプセルまで払う。 フロを浴びているクラックのところヘやって来たピンチョ、クラックの入っているカプセルのまわりを払い、苛性ソーダにつかっているクラックの頭の角を払う。胴に首をひっこめてしまうクラック。ピンチョ、クラックの胴に腕を突つ込んでみる。
 と、グワッとピンチョの腕に噛みつくクラック。ピンチョの手からほうきをもぎとる。
クラック「うるせーな!!」
 クラック、カプセルの蓋を閉めてしまう。
 中からクラックの鼻歌が聞こえる。
 ピンチョ、特大のほうきをとりだして、バサバサとカプセルを払う。
 パッと蓋を持ち上げて、怒鳴るクラック。
クラック「あっち行けーっ」

 サロン。
 クラックとプークスがテーブルに着いている。クラックがテーブルの上の皿の中のポップコーンを、キツツキのように猛烈に食っている。
 ひとしきり皿のポップコーンをつついてほおばり、顔をあげてゆっくりと噛み、背中の穴からバーッとカスをほき出す。
 カス、バラバラととんで、立っているピンチョに降りかかる。床に散らばったカスを掃き集めるピンチョ。
 また皿のポップコーンをつつき、背中からカスをほき出すクラック。
 ピンチョ、クラックの傍まで来て、テーブルの上にちらかったポップコーンを掃く。
クラック「ところきらわず掃除するのはやめろ! めしもおちおち食えやしねえ」
 向かい側では、プークスがシャボン玉をふくらませている。(食事をしているのか?)
ピンチョ「クラックみたいにこぼす。みっともないね」
クラック「はばかりながらな。メシはうまけりゃ、それでいいんだい。てめえの知ったことか、このぬいぐるみ野郎」
ピンチョ「食事のときこぼすの、しつけ悪いね。クラックの親の顔みたいね」
クラック「やかましい!(クラック、背中からバーッとカスを、ピンチョに向けてほき出す) そんなに掃除したけりゃ、くれてやらあ」
 クラック、皿ごとピンチヨにぶちまける。
 ピンチョ、カスを集めていた袋で、クラックをひっぱたく。
 クラック、その袋を奪いとり、ピンチョを二度ひっぱたく。
 ピンチョ、ほうきでクラックをひっぱたく。叩き合う二人。プークスが体じゅうの穴からシャボン玉をふくらませている。

 ベッドルーム。
 プークスが体をふくらませたり、しぼませたりしながら、いろんな音を出して寝ている。
 七色の音。その傍にクラックがサイコロになって寝ている。
 棚の上には、プークスのいびきで眠れないピンチョが、真っ赤な目をして腰かけている。
 血走った目のピンチョ。プークスの穴のぜんぶにセンを詰めてしまう。
 静かになるプークス。
 満足そうにゆっくり寝るピンチョ。
 だんだん膨れてゆくプークス。ついにセンがとぶ。
 たてつづけに飛んでくるセンにびっくりして起きたピンチョ、物陰にかくれて目をパチクリ。ふたたびプークスの七色のいびき。

 コックピット。
ゴドー「宇宙は広い! 限りなく広い… それにくらベて、ぼくはなんてちっぼけなんだ… まるでゴミみたいなもんだ。ぼくは… いったいなんのために生きてるんだろう。火の鳥と闘う。闘って死んでゆく… ぼくの人生はそれだけなのか。ぼくには、もっともっとやりたいことがあったのに…」
サルタ「何をいうんじゃ、ゴドー、おまえには、地球を救うちゅう重大な使命があるんじゃ」
ゴドー「なぜ、オレがそれをやらなけりゃならないんです? どうしてぼくが選ばれたんだ?」
サルタ「運命じゃよ。おまえは、多分生まれた時からそういう、選ばれた人間だったのだろう」
ゴドー「元老院にですが?」
サルタ「いや… 神、というかな… おまえは地球を、人間を救うために神に選ばれ、これから試練をうける身と思えばよい… 火の鳥と闘う… それが試練なのじゃ」

54. スペース・シャーク・居住区

 暗い霧のなかをゆっくりと走ってくるレナ(スローモーション)。近づいてくると、いつの間にかオルガにすりかわっている。
 手を前にさしのベるオルガ。
オルガ「ゴ… ドー… (エコー)」
 眠っていたゴドーがハッと目を醒まし、起き上がって考え込む。
オルガ「どうしたの」
 ハッとして振り返るゴドー。気づかわしげなオルガが立っている。
ゴドー「おまえか…」
 ゆっくりとうつむくゴドー。
オルガ「ゴドー、苦しそう。寢ながら何かいっていた」
ゴドー「寝言さ、夢を見てたんだ…」
オルガ「ュメ…」
ゴドー「レナがいた、ぼくを呼んでた」
オルガ「レナ、もう結婚したわ」
ゴドー「わかってるさ! (腹立たしそうに)」
 オルガ、びっくりしたように身をひき、おずおずと顔をゴドーに寄せる。
オルガ「ゴドー、オルガに何かできることない」
ゴドー「ありがとう、おまえはほんとにいい友だちだ。でも… ロボットにはできないことだってあるんだ」
 はき出すようにいうと、ゴドー、ふっと立って歩き出す。
オルガ「たとえば?」
 ロッカーから服をひっぱり出すゴドー。
ゴドー「オルガ、おまえには、青春ってものがあるかい?」
オルガ「セイシュン…」
 目をパテパテさせているオルガ。
 ゴドー、ひっぱり出した服を着ながら。
ゴドー「ないだろうね。ロボットには… (ゴドー、オルガのほうを向いて) おまえにわかるはずないんだ。ぼくは友だちが欲しい! 心の底から… (バタンとロッカーの扉をしめる)信じ合え、愛し合える友だちが欲しいんだ!」
 オルガ、背後から、そっとゴドーに近づく。
オルガ「オルガ、ゴドー好きよ。ゴドーのためならなんでもする。いつでもゴドーのそばにいる。それでもだめ」
ゴドー「ぼくの欲しいのは、人間の女のコだ!」
 足音をたてて部屋を出て行くゴドー。
ゴドー「ごめんよオルガ。気にするな」
 ゴドー、入り口の向こうに去り、暗い部屋の中に、オルガがひとり、うなだれて立っている。

55. スペース・シャーク・サロンの片隅・窓の傍

 オルガが顔を手で覆ってシートに腰かけている。
 顔をおこすオルガ。窓にうつる自分の顔を見ているオルガ。
 そんなオルガのようすを見守っているクラックとプークス。
クラック「オルガちゃん、気持わかるよ。そういう時は、思いっきり泣けよ。涙で悲しみを洗い流せよ」
オルガ「オルガ、涙出ないの、泣く装置がないんです」
クラック「やれやれ、せっかくオレもらい泣きしようと思ったのに (クラック、穴から目薬をとり出して) じゃあ、目薬をつけたらどう? 泣けるかもよ (オルガの目に目薬をつけてやる) 女のコは泣かなくちゃね」
 オルガの目には目薬の涙がたたえられ、頼を伝って流れる。
クラック「ほーら、泣いた。か… かわいそうな… トホホ…」
 もらい泣きをするクラック。
ピンチョ「そんななぐさめ方あるもんか!」
 びっくりして首を胴にひっこめるクラック。
ピンチョ「レディに向かって、なんて不作法な」
 クラック、胴の前の穴から首を突き出して。
クラック「うるさい、オレの国じゃあな、泣く子と女は泣かせろってんだい」
ピンチョ「クラックの国、場末だろ」
クラック「もう一度いってみろ」
 三か所の穴から首を出して怒鳴るクラック。
クラック「このやろう」
 クラック、ピンチョにとびかかり、取つ組み合いになる。
 傍で見ていたプークスが、いきなりちぢんでもの凄い音を出す。
 ブヒョーッ!
 ふっとぶクラック、壁にぶつかってはねかえり、部屋じゅうを転げまわる。
 ピンチョ、胸のタルからラッパを取り出す。
ピンチョ「オルガ、音楽わかるね。悲しい時、音楽聞く、心晴れる。希望湧いてくる。さあ、そこに座って! 音楽だ」
クラック「へッ! 何が音楽でえ」
 ふてくされているクラック。

56. スペース・シャーク・サロン

 三人の宇宙人の合奏シーン。
 ピンチョがラッパを吹きはじめ、プークスが低音で合わせる。
 ふてくされて見ていたクラックも、笛を取り出して合奏に加わる。
 ひとしきり続く三人の合奏。楽しい曲。
 楽しそうに見ているオルガ。
 クラック、ポットをかぶって得意になって行進し、ピンチョは、ほうきを相手にダンスをする。
 クラックの撒く紙吹雪。
 すっかり調子にのった三人のゆかいな合奏がつづくスペース・シャークのサロン。
 外は真っ暗な大宇宙。

57. 宇宙をゆくスペース・ジャーク

 コックピット。サルタの前のテレビスクリーンに、どろどろにとけた宇宙船の姿。
サルタ「ゴドー! ゴドー! 見ろ! 遭難した宇宙船だ! …地球の船らしいぞ」
ゴドー「なぜ… こんなところで…」
サルタ「まったくだ。よっぱどの用でなけりゃ、こんな宇宙の涯まではこんわい」
ゴドー「もしかしたら、地球型の別の生命体かもしれない」
 とけた宇宙船にスピードを落として接近するスペース・シャーク。停止する。
 ゴドー、宇宙服に身を固め、スペース・シャークから宇宙遊泳でとけた宇宙船にゆっくりと近づき、手を伸ばして、宇宙船にあいた穴のふちに手をかける。
 暗い船内に乗り込んだゴドー。ライトを取り出して照らす。
 ライトの光芒の中に浮かびあがる焼け焦げた文字板。
 かすかにローマ字が読みとれる。
ゴドー「信じられない… これはスペース・シャークだ… (ベこベこになった壁の、通路を通ってコックピットヘ) オレの船じゃないか… (どろどろになったたコックピット) なにもかも、どろどろにとけている。(飴のようによじれ曲がっている銃座) …ものすごい高熱にやられたんだ」  コックピットの天井に異様なものが漂っている。ゴドーがライトを向けると、その光芒の中に、すさまじい形相のボルカンの死体が浮遊している。
 スペース・シャークに戻ったゴドー。サルタたちに報告している。
ゴドー「あれはスペース・シャークと同じ型の狩猟船だ。残ってた遺体は… ぼくの知っている男です。科学センターにいた教官でした」 サルタ「すると、科学センターは、その男にも火の鳥を捕まえに行かせたのか?」
ゴドー「おそらく、ぼくがキャンプにブチ込まれたんで、代わりに任命されたんでしょう。だが… 犠牲になってしまったんだ…」
ピンチョ「なんに?」
クラック「もッち、火の鳥にさあ! あんなにどろどろにとかしちまうのは、火の鳥しかいねえよ」
プークス「××××…」
ゴドー「なんだって?」
クラック「火の鳥はたぶん、まだこの近くにいるってよ」
 クラック、穀をたくしあげて。
クラック「おい、逃げようぜ。まごまごしてるとこっちまでとかされちまわあ… (ゴドー、サルタたちFr.Oする。その後ろ姿に向かって毒づくクラック) おまえら、ことの重大さがわかんねえのか、おれあごめんこうむるぜ。ただ道案内に来ただけだ。おまえらと心中は、まっぴらさ」 ゴドー(Off)「クラック、プークス、星図を見てくれ」
クラック「いやなこった。オレはストライキ中だ」
 クラック、殻の中に首がひっこんで、あちこちの穴から赤旗がどっと出る。

 58. 温泉星

 無気味な星。スペース・シャークが接近してゆく。ガスと霧の流れる中を降下してゆくスペース・シャーク。着陸する。
 宇宙服を着たゴドー、サルタと三人の宇宙人がスペース・シャークを出て、火の鳥捜しをはじめる。
ゴドー「プークス、たしかにこの星なのか」
ブークス「××××」
クラック「この星で火の鳥が出入りするのを見たとさ」
サルタ「いよいよ敵の本陣じゃな」
ゴドー「なんでしょう」
 足もとにキラキラと輝く青い結晶が、いっぱいある。
サルタ「何かの結晶らしいな」
 結晶のひとかたまりが、流れるようにすべって逃げる。
ゴドー「ごらんなさい! 動いている」
 プークスが、振り向いて、クレーターを指さす。
プークス「××××…」
クラック「このクレーターに何度も鳥が、入ってくそうだ」

59. 温泉星・クレーター

 巨大なクレーター。ゆっくりガスが噴き出ている。底のほうではガスがもうもうと噴き出てうずまいている。
 クレーターのふちに立って、中をのぞき込むゴドー。
 振り返ってサルタに。
ゴドー「博士、入ってみます」
サルタ「ム、大丈夫がね」
ゴドー「こういう事は、ぼくの仕事ですよ」
 ゴドー、手にしたツールボックスを置いて、中から埋め込みボルトを取り出し、岩に押しつける。ボルトの肢から溶解液が出て、岩をとかし、肢がめりこむ。
 金輪をひきおこし、ザイルを通したカラビナをかける。
サルタ「気をつけてな」
 ザイルに手をかけ、崖をおりはじめたゴドー、サルタの言葉にうなずくと、ポーン、ポーンと岩壁をけって降りて行く。
 降りて行くゴドー、ガスの中にかすんでいく。途中、下を見るゴドー。クレーターの底には、たくさんの小さな噴気孔があり、いろんな色のガスを噴き出している。
 クレーターの底についたゴドー、あたりの様子をうかがう。
 大クレーターの底は、平坦になっており、そこにいくつかの小クレーターが、それぞれ赤や青、黄色といったガスを噴き出しており、さながら七色のガス温泉といった感じ。
 慎重に歩きはじめるゴドー。最初に青いガスを噴き出している小クレーターに近づき、のぞき込むゴドー。クレーターの中は明るく光っているが、別段変わった様子でもない。
 次に赤いガスを噴き上げているクレーターに近づいてのぞき込む。
 あたりを見まわすゴドー。
ゴドー「博士、どうもむだなようです。火の鳥はいません。巣らしいものも、見あたりません」
サルタ(Off)「どこかヘ出ていった留守じゃないのかね?」
ゴドー「とにかく気配がまるっきりないんです。あるのは… ガスと… それから… (黙る)」
サルタ(Off)「それからなんだねゴドー、どうした?」
ゴドー「…」
サルタ(Off)「ゴドー、どうしたんだ。なぜ黙っている? ゴドー! 返事したまえ」
 とあるクレーターの中から明るい光が出て、徐々に強くなり、ガスをイルミネーションのように照らす。ゴドーのヘルメット、顔も照り返しをあびている。クレーターの光、きわめて強くなり、キラキラと輝き、星くずのような光のかたまりがガスの中をあがってくる。その中にぼんやりと鳥のようなかたちが見える。
 思わず岩陰にかくれるゴドー。
 ガスを噴き上げるクレーターの上にすーっと立つ鳥のようなもの。姿は女性のようにも見える。鳥は一面にきらめく星の中で、ゆっくりと翼を広げ、ガスに見えがくれしながら、大きくひとはばたきすると、ブワッと浮き上がり、他のクレーターに移った。そこで翼を胸に組み、ついで頭上に高々とのばすと、泉につかるように、ゆっくりとクレーターの中に入ってゆく。あとにはガスの中に七色の光が残っている。 ゴドー「(つぶやくように) 博士… いました」
サルタ(Off)「(せきこんで)火の鳥がか?」
ゴドー「そうです… 鳥のようです… 人間のようにも見えます」
 崖の上のサルタ。まわりで三人の宇宙人、目をパチパチやっている。
サルタ「捕まえられそうか?」
ゴドー「わかりません… 今、鳥は… クレーターの中ヘ入ってます。まるで遊んでいるように見えます」
サルタ(Off)「なんとかして生け捕りにできんか?」
ゴドー「麻酔銃を使いましょう」
 と、麻酔銃を取り出す。
 クレーター。ゆっくり首から出てくる鳥。気持よさそうに羽を動かし、頭を上に向ける。
 麻酔銃の狙いをつけるゴドー。
 発射。
 命中。
 麻酔銃の衝撃を受けてのけぞり、翼を広げて首をくねらせ、強烈な光を発して、光の玉と化す鳥。
ゴドー「うわーっ」
 強烈な光をあびて、真っ白になるゴドー。
 強烈な光と熱を受け、泡立ってとけて流れる岩。よろけるゴドー。
 光の球、あたりを真っ白に照らしながら、上昇して行く。
 目がくらんで背後に倒れるゴドー。
 岩壁にそって上昇をつづける光の球、光の球が近くを通過すると、岩壁がとけ、炎をあげて燃えはじめる。
 あたりいちめん火の海となる。
 岩にしがみついて立ち上がるゴドー。まわりで火が燃えあがる。
 光の球、崖にそって飛びつづけ、クレーターのヘりに達する。クレーターのヘりに立ってこのありさまをうかがっていた、サルタとピンチョの眼前に突如出現する光の球。驚いてひっくりかえる二人。
 光の球、上空ヘ飛び去る。
 クレーターの底は、いちめん火の海と化し、ゴドーが火勢に追われて逃げまわっている。
 ようやく岩壁に達し、見るとザイルがない。あわてて足もとを見ると、ザイル、燃えて炭化してしまっていた。
 岩壁を叩いて叫ぶゴドー。
ゴドー「だれかーっ、ザイルをおろしてくれーっ」
 岩壁の一部がとけて、ジンワリと崩れてくる。
 ゴドーに迫る炎。炎に包まれた岩が転げ、落ちかかってくる。危うく身を避けるゴドー。
 空中に浮いている光の球。
 噴火口に向かって叫ぶサルタ。
サルタ「ゴドーっ」
 サルタが頭上を見上げると、光の球が空中を移動している。崖の上に立ったサルタ、麻酔銃をかまえると、光の球を狙って発射。光の球、一瞬ふくれあがり、いくつにも分かれ、バラバラになってサルタを襲う。
サルタ「ウワーッ!」
 光の球、合体してサルタを包み込み、青い光の球となって四散する。
 と、サルタ、火ダルマになって倒れる。
 飛び散る炎とともに、ピンチョも放り出される。ピンチョ、小さなクレーターを見つけると、さっさっとほうきで払って、中に飛び込んでかくれる。そこヘプークスがやってきて首だけ突っ込んで、尻まるだしでかくれたつもり。
 クラック、火の鳥の尾羽根にとらえられ、フライパンかなんかのような具合に、ほうりあげ、ほうりあげしながら焼かれる。
 尾羽根、すっかり赤熱している。
 オルガのジェット機がものすごいスピードで、飛んできて、クレーターの中へ。
 もはや、逃げ場を失って、助けを求めていたゴドーをぐっと抱きかかえ、空中高く飛び上がる。
 空中を飛びながらサルタを捜すゴドー。
ゴドー「博士!」
 眼下の岩場、いちめんの火の海。
ゴドー「サルタ博士!」
 雲の切れ目に、キラキラと光る鳥のような姿が見える。
 オルガ、その鳥をめがけて飛ぶ。
 ゆっくりと翼を動かして飛ぶ鳥。
 突っ込んでゆくオルガ。ぐっと接近すると鳥は光のかたまりとなって、さっと体をかわす。
 光のかたまり、火の鳥の形となり、ゆっくりと翼を動かしている。
 オルガが襲いかかると、火の鳥、また光のかたまりになって遠くヘ身をかわす。
 ただちにそのあとを追うオルガ。鳥、からかうようにさらに遠くヘ逃げる。
 麻酔銃をかまえ、オルガにかかえられているゴドー。
ゴドー「くそっ」
 鳥の形をした光は、動きながらクルクルまわり出し、火花を流しながら、形が変わってゆく。急に蝶のような形になって、ゆっくり羽をはためかせて、遠くに飛んでゆき、旋回して戻ってくると、コウモリの形になり、一瞬、コウモリの羽は青い炎になって燃え、光の球に尾羽根だけの形になって、しだいに遠ざかる。あとを追うオルガ。鳥、オルガがたどりつく前に、さっと身をかわし、追いすがるオルガが近づくと、またさっと身をかわす。
 オルガの追跡が激しくなると、光の球、パッパッと直線的にかわしはじめ、オルガをやりすごし、光の球から手のような羽を一本のばして、おいでおいでをする。とびかかるオルガ。直線になって逃げる光の球。
 ゴドーはオルガに抱えられるようにして飛んでいる。
ゴドー「銃ではだめだ!」
 と、腰から磁力網弾を取り出し、スイッチを押して点火。磁力網弾はミサイルのように噴射して飛んで行く。
 悠々と逃げる火の鳥を追う磁力網弾、火の鳥に近づくと、パッと花火のように広がり、火の鳥を包み込んでしまう。
 磁力網にからめとられた火の鳥。そのまま地上に落下する。
ゴドー「やった」
 磁力綱にからみつかれた火の鳥が地面に叩きつけられ、転がっている。
 オルガ、着地。ゴドー、オルガからはなれると銃をかまえて火の鳥に近づく。
ゴドー「生け捕りだ!」
 振り返ってゴドーがオルガにいった時、火の鳥の羽根が金色から、しだいにうろこ状のトカゲの肌のょうになる。
ゴドー「見ろー…」
 火の鳥、みるみる全身が青くなり、結晶のような柄ができ、ポロリと青いかけらに崩れる。危険を感じとったオルガ。
オルガ「ゴドー」
 青いかけらが液状に広がり、二人の足もとにのびてきて、さらに広がり地面に鳥のような形をつくる。
オルガ「危ない」
 ゴドーを抱え、飛び上がって逃げるオルガ。
 青いかけら、盛り上がって山をつくり、丸くなってふくれ、星をちりばめたように輝いているが、いきなりパッと触手を、いっせいに出す。触手、岩の上に逃れたオルガとゴドーめがけて襲いかかってくる。ゴドーを抱え、ふたたび飛んで逃げるオルガ。妖しい球体から生えた触手をうごめかしながら、浮き上がる怪物。触手が向きをかえて空にのび、くっつき合って一本になり、蛇のようになってうねりながら、雲の間を昇って行く。  危うく触手を逃れたオルガとゴドーは、岩の割れ目に転がり込む。
 悠々と昇って行く火の鳥蛇。
ゴドー「助かった! それにしてもすごいヤツだ!」
 蛇、はるか空のかなたベ、光となって消えてゆく。
 オルガが岩のすき間からとび出してきて、ゴドーを引っ張りあげる。
ゴドー「オルガ、博士を捜そう」
 浅いひらけたクレーターの底。まわりには苔のような、結晶のようなものが炎をあげて燃えつづけている。
 やけどを負って倒れたサルタのまわりに、ピンチョ、クラック、プークスたちが心配そうに立っている。
 クレーターのふちにゴドーが姿を見せ、スロープをすべりおりて、駆け寄ってくる。つづいてオルガも。サルタの様子をみるゴドー。
ゴドー「どうなんだっ」
ピンチョ「気密服破けた。毒のガス吸って死にそう」

60. スペース・シャーク機内

 サロンの台の上に寝かされているサルタ。
ゴドー「オルガ、救急ケースだ!」
オルガ「ハイ」
 三人の宇宙人たちもいる。
クラック「ベッ、だからあんな怪物相手にするのはやめときゃ、よかったんだ。ヤツは悪魔なのさ (口のはじに指をかけて両方に引き、ものすごい表情をつくる)。つかまえることも (と、首を引っ込め、腕を突き出す)、殺すことも、できねえのさ」
 サルタ、メディカルルームの医療機器によって治療を受けている。
ピンチョ「今それいっても、仕方ないだろ。クラック」
クラック「あきらめて涙星ヘ帰ったほうがいいぜ、いいかげんに…」
 サルタの治療進む。薬をぬり、貼布チューブが合成樹脂の粘膜をぬり、赤外線を照射し、注射までうつ。ぜんぶ自動的に行なわれる。
 コンピュータルーム。
 マザーコンピュータが、次々とデータを打ち出す。
 コンピュータの表示を見つめるゴドー。
コンピュータの表示「レーダーに未確認飛行物体を捕捉。距離50エルグ、この物体は高速で遠ざかりつつあり」
ゴドー「発進準備! (つぶやく)2772だ… 逃げようたって逃がさんぞ!」
 コンピュータのランプ類が激しく点滅。
コンピュータの表示「発進態勢完了」
 ゴドー、コックピットに走り、シートに座る。三人の宇宙人たち″シートベルトの着用″のサインを見て右往左往している。
ゴドー「磁力場浮上」
 蒸気の立ちのぼる中、スペース・シャークゆっくりと地表をはなれ、上昇してゆく。
 ぐんぐん遠ざかる温泉星。ゆっくりと機首の方向を転換し、メインエンジンをふかして2772の追跡コースに入る。

 コックピット。
 ゴドーのシートの背後に、オルガに支えられてサルタが立っている。
オルガ「ゴドー、博士が」
ゴドー「サルタ博士! そのケガで… 寝ててください」
サルタ「寝ておれだと? こんな時に… 人に任せていられるか。わしのシートに座らせてくれんか」
 オルガに導かれて、シートに座るサルタ。
サルタ「フーッ… おまえ一人じゃ無理だ」
ゴドー「しかし、博士は…」
サルタ「へッ! 目は見えなくとも、耳も口もこのとおり健在じゃい! わしはな、どうあっても、火の鳥をこの手で捕え、たしかめたいんじゃ。まだまだ参らんぞ」
 あきれ顔で聞いているゴドー。
サルタ「よしんば生け捕りにできずとも、せめて仕止めて地球ヘ運び、人類を救うんじゃ! 何をもたもたしとる。さっさと火の鳥を追いかけんか」
ゴドー「心配いりません。このくらいの距離なら、ワープ航法によって先まわりできます!」
サルタ「解説はたくさんだ。そんな時間があったら実行に移ったらどうだ」
ゴドー「ワープチェンジ、指標Q-226!」
 コックピットの外、光がうずまき、スペース・シャーク、白光に包まれる。
 スペース・シャークの位置表示。別の空間に到達したことを示す。
 スペース・シャークを包む青いもやが消えて、星空が見えてくる。
 スペース・シャークの行く手にアステロイド(小惑星)が浮いている。
 アステロイドに接近するスペース・シャーク。
ゴドー「なんだこりゃ… ただのアステロイドじゃないか… 2772はどこへ行ったんだ。調ベろ!」
 計器盤のランプがあわただしく点滅して、表示がでる。
表示「未確認飛行物体はレーダー有効範囲に捕捉されず」
ゴドー「えーい、腹が立つなあ、もう… たしかに2772だと思ったのに!」
 アステロイドに着陸するスペース・シャーク。
サルタ「どんな星だね?」
ゴドー「直径約ニ百メートル。表面はツルッルして、クレーターもありません」
 クラック、窓から外をのぞいて。
クラック「なんだか胸さわぎがするぜ」
ピンチョ「ピンチョ、調ベてくる」
クラック「また始まった。おまえはそれだから困るんだよ。なんか目新しいもんがあると、すぐ首を突っ込みやがる。宇宙にはな…」
 手足と首を引っ込めて、サイコロになって転がるクラック。さかさになって頭を出し、わめく。
クラック「穴に手を入れるなって、諺があるんだ」
 ピンチョ、宇宙服を着て、ヒョイと首を出す。
ピンチョ「クラックこそ穴だらけのくせに」
 クラック、穴の中からいろんなものをひっぱり出す。
クラック「カッペ野郎! こりゃ穴じゃねえ、ポケットてえもんだ」
 クラック、ピンチョにつめ寄って。
クラック「オレのいってるのはな、おまえが、そのうすぎたねえほうきで、見ず知らずのものを、なでまわす道楽は、ほどほどにしろってんだ」
ピンチョ「これ、道楽じゃないぞ、エチケット、しきたり」
 と、ほうきでクラックの顔をなでる。
クラック「よせったら!」
 と、ピンチョの手からほうきを奪いとり、胸の穴に突っ込む。うしろからふき出す毛。
すっかり毛先のなくなったほうきをピンチョに見せて。
クラック「これで、ブケでもとりな!」
 ピンチョ、さっと毛先のなくなったほうきをとり、うむをいわせずクラックの口の中ヘ押し込み、頭をつまみあげて喉をしめる。ほうきの柄が喉につまって、横に突き出して喉がふくれる。
 クラック、首をひっこめようとするが、ほうきの柄が穴につっかえてひっこまない。背中の穴からハンマーを握った手を出し、力まかせに頭を叩く。頭、ひっこむが、クラックの穀のあちこちの穴から星がとび出す。
 胸の穴からヌーッと顔を出したクラック。いきなりピンチョにとびかかる。
クラック「コンチクショウ、ヌイグルミめ!」 (取っ組み合いになる)
プークス「ブウーッ」
 プークスが二人のけんかに割って入り、クラック、ふっとばされ、サイコロになって転がり、コップ状のガラスのパイプの中に落ち、ダイスのように転げまわって止まる。
 上からのぞき込むプークス。
プークス「ブウーッ、×××」
クラック「わかったよ。わかったっててば、オレはただピンチョを、とめようとしただけなんだ」
プークス「ブブッ、ブーッ、×××ブッ」
 パイプから床ヘよじ登って戻るクラック。
クラック「これもさあ、あいつの身が心配だからさ。おまえもいいきかせてやれよ。でなきゃあ、出ていっちまうぜ」
プークス「ブッ……××」
 出て行くピンチョのあとをヨタヨタと追いかけるプークス。
 ピンチヨがエアロックのドアの向こうに姿をかくすと同時に、プークスの目の前でドアが閉まる。ドアに衝突するプークス。
プークス「ブーッ!」
 リフトでアステロイドの地表に降りるピンチョ。スペース・シャークを離れて歩き出す。
 アステロイドに立って、あたりの様子をうかがうピンチョ。
 コックピットに駆け戻ったクラック。
クラック「ピンチョが勝手におりたぞーっ」
ゴドー「なんだって! 早く呼び戻せ… (ゴドーが外を見ると、ピンチョ、アステロイドの表面をほうきで掃いている) あっ、あそこだっ」  不透明なアステロイドの表面を、あちこち掃いているピンチョ。突然、アステロイドが透明になって、何かが見えてくる。
ピンチョ「なんだ、ヒャ! すけてきた」
 ピョンピョンと跳び上がって後ずさりするピンチョ。
 アステロイドの中身が光りはじめる。
ピンチョ「この星… すけてきた…」
 地表がつややかに光る。透明な地表の下に怪物がゆっくりと息づかいをしている。
ピンチョ「これ、本物の星じゃない!」
 逃げだすピンチョ。逃げるピンチョの足もとにひび割れが走り、グワッと口を開ける。
 割れ目に足を踏みはずすピンチョ。あっという間に割れ目に吸い込まれる。と、地割れが両方から盛り上がって、噛みしめるようにモリモリと動きながら、もとのなめらかな地表に戻る。リフトに乗ってピンチョのあとを追って来たクラック。
クラック「ピンチョが星に食われたーっ」
 コックピットでこの声を聞いたゴドー。
ゴドー「危ない、出るなっ」
 クラック、地表に着いたリフトから降りて、地表を走りはじめるクラック。中に身をひそめた怪物が、身じろぎをすると、地表に音をたてて亀裂が走る。
 あわてて呼びかけるゴドー。
ゴドー「見ろっ!」
 走るクラック。
クラック「ピンチョーっ」
 クラックの足もとで亀裂が! と、その瞬間オルガが飛んで来て、さっとクラックを持ち上げる。と、同時に亀裂が大きく口を開く。  地表に白い筋が入り、たちまち割れて広がる。
ゴドー「あいつだ! 畜生め」
 地表がすけてきて、何か巨大な怪物が、うごめき、アステロイドの表面、いちめんに白い亀裂が走っていく。
ゴドー「至急浮上!」
 ゆっくり浮上するスペース・シャーク。
ゴドー「大至急、このアステロイドから離脱するんだ!」
 アステロイドの地表、しだいに崩れてくる。
 スペース・シャーク、メインエンジンに点火、急速に遠ざかる。
 アステロイドの中に、うずくまるようにしてかくれている2772。
ゴドー「あいつ、自分の体から石灰質をしみ出させて、それをかぶって、星くずのふりをしてたんだ」
 矢のように逃げ去るスペース・シャーク。
サルタ「逃げるな! なぜ闘わん?! ゴドー、おまえはそんな腰抜けなのか?」
 アステロイドの表面が、パアッと光り、大爆発を起こす。爆発の中からぐんぐん赤色の羽がのびて、中から火の鳥が姿を現わす。
 血走った目がギラギラと輝き、鋭いつめをもった肢をのばし、大きくはばたいて、スペース・シャークにせまってきた。
 ぐーっと大きく広がって、つかみかかる肢。
サルタ「ヤツだーっ」
ゴドー「どっちだっ」
 つかみかかる肢から、危うくのがれるスペース・シャーク。
 二つの肢が炎をひいて襲ってくる。
ゴドー「足だけが襲ってくる!」
 つかみかかる二つの足の間をすり抜けるスペース・シャーク。
サルタ「そんなバカな」
 つかみかかる肢、ガチッと組み合わさってひとつになり、かたまってモヤモヤとうごめき、パッと口をあける。
 みるみる大口の怪獣に変わって、スペース・ジャークに追いすがり、キバの生えた大口を噛み合わせると、その鼻先が伸びて、蛇のようになり、しつこくスペース・シャークを追いまわす。
 コウモリのような翼を十枚も生やした巨大怪獣となった火の鳥が迫る。
サルタ「逃げろ、ハイパースペース!」
 怪物の手の指がみんな蛇の頭になって、鎌首をもたげ、両側からスペース・シャークをはさみうちにする。と、スペース・シャークのまわりが星空が、突然四次元空間にかわる。
 亜空間の光の中を行くスペース・シャーク。
 目をパチクリさせているゴドー。
ゴドー「こんなバカな… この宇宙空間に蛇や龍が現われるなんて… こいつは幻だ。2772のヤツが、ぼくの脳細胞に妄想を見せてるんだ…」

61. 別の宇宙空間

 すさまじい光の奔流。
 ピタッと消えて、星空になる。
 チリのような点状の画像から、だんだん凝集して、ゴドーとサルタになる。
 大きく息をするゴドー。
 前方に巨大な赤色巨星。表面がギラギラと渦巻いている。見て驚くゴドー。
ゴドー「ウワッ」
 スペース・シャーク、ゆっくり回転しながら赤色巨星にひきこまれてゆく。
ゴドー「しまった! 正面に星だ!」
 ぐんぐん星に近づくスペース・シャーク。
ゴドー「重力につかまりましたっ! (スペース・ジャークの回転につれて、機内ではオルガが転び、プークスはクラックに衝突する)。衝突だ、くそっ!」
 と、赤色巨星の表面から、一条の竜巻がうずまきながら伸びはじめる。
 ますます巨星に近づくスペース・シャーク。
 龍巻しだいに回転しながら鳥の形になっていく。
 回転をつづけるスペース・シヤーク。
 龍巻の頭、さらにのびて鳥の頭部を形づくってゆく。
ゴドー「ヤツだ」
 鳥の頭、蛇のようにのびて、ぐーっとスペース・シャークにせまってくる。カーッと開いた口の中は粘液にまみれ、すさまじい形相である。
 スペース・シャーク、バッと電光砲を発射。
 電光弾がとんで火の鳥の頭部の両側から、放電する。次々と電光砲を発射するスペース・シャーク。電光弾、ますます激しく放電する。
 火の鳥の首が放電に包まれ、白く光りだし、爆発を起こす。火の鳥、頭から煙を吐きだしながら、赤い玉となり、蛇がのたうちまわるような動きを見せて縮んでゆく。と、小さく縮んだ赤い玉から、いくつも龍巻がのびて、肢や羽の形をとり、首ものびて、移動をはじめる。
 すっかり鳥の形をととのえた火の鳥、炎をあげて燃えながら、大きく羽ばたいて飛び、スイ星のように長い尾をひいている。
 あとを追うスペース・シャーク。
 スピードをあげる火の鳥。
 スペース・シャークもスピードをあげて、そのあとを追う。
サルタ「追え! その調子だ!」
ゴドー「畜生め」
 火の鳥、飛びながら光に包まれ、スイ星のような光の玉になって飛びつづけ、追いすがるスペース・シャークの前で急反転して逃れる。
 追撃するスペース・シャーク。
 宇宙狭しと繰り広げる、火の鳥とスペース・シャークの追撃戦。
 火の鳥、光り輝きながら逃げつづける。
 と、前方から回転しながら飛来する巨大な隕石。火の鳥、そのまま突進して小惑星に激突する。と、小惑星は砕け、四散して、隕石雨となり、スペース・シャークに降りそそぐ。
 危うくスペース・シャークをかすめて飛び抜ける破片。側壁に激突する破片。
 身ぶるいするスペース・シャーク。
 機内で床に叩きつけられるオルガ。転げまわるプークス。
 別のアステロイドめがけて飛ぶ火の鳥。
 激突。岩は四方に飛び散る。さらに別のアステロイドめがけて突つ込む。砕け散るアステロイド。
 すさまじい隕石の集中豪雨をあびるスペース・シャーク。コックピットに激突する岩の破片。
 激しい衝撃をうけるスペース・シャーク。機内のあちこちで計器が壊れ、部品が飛び散る。震動でふっとんだクラックが計器盤にぶつかり、配電盤に触れてスパークを起こし、床に転げ落ちて、穴から白旗をかかげて降参する。
 アステロイドに突進する火の鳥。砕け散った岩の破片が、ひっきりなしにスペース・シャークを撃つ。
 まともにコックピットに命中する岩の破片。
 すさまじい衝撃を食って、シートごとはね上がるゴドー、そしてサルタ。
サルタ「ヤツめ、星屑をわざとぶっ壊して、この船にぶち当てる気だ」
 火の鳥、頭をさげ、肩を怒らせ、猛スピードで宙を走り、近づいて来る緑色のアステロイドめがけて突っ込む。緑色のアステロイド、卵が割れたように、緑色の液体が飛び散る。
 スペース・シャークのコックピットのガラスに、ビシャッと一面にかかる緑色の液体。
 緑色の液体まみれのスペース・シャーク。
ゴドー「わっ」
サルタ「どうしたっ」
ゴドー「何かに視界を逆られた」
 急いでコンピュータのボタンを押すゴドー。スクリーンにスペース・シャークの形の表示が出て、何かに侵されている部分が、緑色にでる。コンピュータ、液体の分析データーを表示。
ゴドー「しまった! 強烈な酸だ! スペース・シャークの外壁を腐食しはじめているぞ!」
 スペース・シャークの外板が煙をあげて、とけはじめている。
ゴドー「このままだと船が穴だらけになる! なんとかしなければ、一巻の終わりだ! 速力を落とせ! 27エルグ!」
サルタ「スピードを落としちゃいかん!」
ゴドー「なぜです、緊急事態なんだ」
サルタ「火の鳥を逃がす気か、見失ってしまうぞっ。とり逃がしたら、もう二度とあえんかも…」
ゴドー「それより船が肝心です。これでは戦えない?」
サルタ「ゴドー、火の鳥を迫えっ、さっさと追跡するんだ」
ゴドー「博士、この船ではぼくが機長だ。ぼくの命令に従ってくださいっ」
サルタ「くそっ、こんな時に機長風を吹かしおって!」
 計器をこぶしで叩いてくやしがるサルタ。
ゴドー「…そうだ… 中和剤だ! 酸を無力にするのは、強度のアルカリしかない… (傍のオルガに) オルガ、たしか倉庫にクラックの苛性ソーダがあったな。あれを全部出すんだ!」
オルガ「はい、出します」
サルタ「中和剤だと? フン、どうやってそれを酸にふっかける? 星屑にでも不時着させる気か」
ゴドー「そんなひまなんかない。やれるのはオルガだけだ。コンピュータ、外壁がどのくらいもつか計算しろ (コンピュータがデータを表示) …あと、たった十分か」
 倉庫にやってきたオルガが、苛性ソーダのタンクを抱えあげている。マイクを通じてゴドーの声が聞こえる。
ゴドー(Off)「オルガ」
オルガ「ハイ」
ゴドー(Off)「機長として命令する。機外ヘ出て、中和剤をまきたまえ」
オルガ「わかりました」
 苛性ソーダのタンクを抱えて歩くオルガの足もとを、クラックがカンカンに転って怒鳴りながらついてくる。
クラック「オレのフロの水だ。オレのもんを勝手に持ち出すと、承知しないぞ、このロボットめ、さっさとそれをもとんとこヘ返せ。機長命令なんか、きかねえぞ、泥棒! 横領!」
 オルガをけとばすクラック。
クラック「いてってってってっ」
 どんどん機体を腐食している酸。スペース・シャークのハッチから苛性ソーダのタンクを抱えて出てくるオルガ。
 機内で、スクリーンにうつるオルガの様子を見守るゴドー。
ゴドー「…オルガ… 酸にやられるなよ… 気をつけて…」
 オルガ、抱えたタンクから苛性ソーダを噴出させて、酸に吹きかける。
 みるみる中和される酸。
 スペース・シャークの外壁をあちこちと、酸を中和させて歩くオルガ。緑色の酸にまぎれて、無気味な目玉焼きのようなものが、外壁に張りついている。目玉炊き、ブルッとふるえると、サッと宙を飛んでオルガの背後から、髪の毛にピタッと吸いつき、モソモソと髮の毛の間に潜りこむ。そんなことにまったく気づかずに、タンクを抱え、中和剤をまきつづけるオルガ。
 コックピットのガラスを覆っている緑色の液体に、中和剤が吹きかけられ、みるみるはがれていく。すっかりきれいになるガラス。
 オルガが顔を出して手を振り、ひっこむ。
ゴドー(Off)「オルガー よーし、大成功だ!」
クラック「ヘッ、何が大成功だい。おかげでこっちゃな、フロにもありつけず、体はススだらけだ (クラックが自分の殻を叩くと、穴からススがこぼれ出る)。もう二度とオレのもんは、使わせねえからなっ… えっ、もっと使うって?… (歩いて行くオルガの足にしがみつくクラック) やめてくれ。バカ、横領、強奪、ギャング。血も涙もねえ女め。もっとも血も涙もあるわけねえけどさ…」
 申し訳なさそうなオルガ。そのオルガの髮の毛が静かに割れて、目玉焼きがそっとのぞく。

62. コンピュータルーム

 激しくまたたくランプ類。点検しているゴドー。
ゴドー「スペース・シャーク、全機能を点検する。報告してくれ… 磁力砲も… クロロダント砲もやられちまったか… なんてハプニングだ… あと頼れるのは、反物質転化砲と… 小火器ばかりだな。よしっ、スペース・シャーク、全機能戦闘配置につけ。(ゴドー、スイッチをあちこち叩く。ところが、ランプ、スクリーンがいっせいにモヤーッと暗くなり、消えてしまう。ゴドーが腰を浮かせる) どうしたんだっ、どういうことだ。(しきりにスイッチを叩く、ゴドー) スペース・シャーク、故障したのか、応答しろ、どうした! スペース・シャーク」
 ランプ一回ボーッと明るくなり、また消えかかる。
ゴドー「コンピュータの故障じゃない。だとすると、なんだ… (赤い非常ランプのみ明滅している) まるで、何かにおびえているようだ…」
 オルガが、コンピュータルームに入ってくる。
オルガ「中和剤撒布終わり」
ゴドー「オルガ! おかげで助かったよ」
 ゴドー、オルガの肩を両手でつかむ。
ゴドー「なんともなかったかい?」
オルガ「ええ」
ゴドー「あの酸は?」
オルガ「こわかったわ、すこし」
ゴドー「こわかった? (絶句するゴドー) …こわいって… いったのかい?」
オルガ「ええ」
ゴドー「しかし… しかし、きみはロボットだ。こわいなんて感情はないはずだろう」
オルガ「学習したの、オルガ」
ゴドー「えーっ?」
オルガ「人間らしくなるためです」
ゴドー「学習したって?」
オルガ「もちろん、オルガ、生まれた時、こわい、うれしい、にくらしい、なんにも心ありません。でもオルガ、ー生懸命覚えました。人間の心、人間の気持… ゴドー… あなたにきらわれないように…」
ゴドー「…オルガ、そんなことは信じられない。ありえないことだ!」
オルガ「オルガ、人間の女のコと同じ。ロボットに見ないで、おねがい」
ゴドー「…さっき、こわかったといったね」
オルガ「ええ、外へでて足がすくんだわ」
ゴドー「足が… すくんだ?!」
 おもわず後ずさりして、スイッチテーブルに手をつくゴドー。
オルガ「…ゴドー、どうしたの…」
ゴドー「…オルガ、きみに聞きたい。スペース・シャークがおかしいんだ… (コンピュータ、ランプ、ボーッと消え、二、三回またたく) 見てくれ、ほら、まるっきり力がないんだ… ちょうど人間でいえば… こわがってふるえているような… そんな気がするんだ。おまえに原因がわかるかい?」
 オルガ、コンピュータの様子を見て、スイッチテーブルに手をつく。
 赤いランプが力なく明滅する。
オルガ「ゴドー、スペース・シャークは… こわがっている… オルガと同じ…」
ゴドー「そんなバカな!」
 酸に腐食され、前半分がボロボロになったスペース・シャークのはるか前方で、チカチカとまばたく強い光。
 スペース・シャークのコックピットでピッピッと警報信号が鳴りつづけている。
サルタ「ゴドー、コックピットヘ戻ってこい! 火の鳥だ! 鳥が向かってくるぞ! 飛行物体接近の信号じゃ! (シートから立ち上がったサルタ) いよいよ決戦じゃあっ」
ゴドー(Off)「博士… コンピュータが働かないんです」
サルタ「なんじゃとオッ」
 近づいて来る光。
オルガ「スペース・シャーク、スペース・シャーク。わたしたちゴドーを助けるの、こわがらないで。2772がやってくる。闘う準傭するのよ」
 コンピュータのランプ、スーッといっせいに消える。
ゴドー「だめだ…! 2772をおそれているんだ!」
オルガ「スペース・シャーク、このままでは、ゴドー死ぬ、オルガもおしまい。あなたもおしまい、みんな負けるわ、それでいいの?」
 光、尾をひさながら接近してくる。警報信号の音、テンポが早くなる。
 通路をよろめきながら歩いてくるサルタ。
サルタ「ゴドー、早くなんとかせんが! アッ… (痛む膝を押さえ、崩おれるサルタ、壁にすがって立ち) ゴドーッ、も、もう鳥はそこまで来とるんだぞ!」
 と、通路の壁に張りついている目玉焼き。
 コンピュータルーム。
ゴドー「スペース・ジャーク、おまえは闘うためにつくられたんだぞ。たのむ、作動してくれ!」
 傍に立っているクラックとプークス。
クラック「もうだめだ… オレたちゃ宇宙のチリになるんだ」
 プークス、練れて音をたてる。
プークス「ブーッ」
 コンピュータルームでオルガがヒステリックに怒鳴る。
オルガ「スペース・シャーク、それでもあなた男なの?!」
 ランプ、いつせいにパーッと明るくともる。
クラック「おこりやがった」
 突然、サルタの叫び声が聞こえる。
サルタ(Off)「ウワーッ」
 コンピュータルームから通路にとび出すゴドー。
 サルタ博士を見て。
ゴドー「サルタ博士…」
 目を皿のようにして、
ゴドー「…博士」
 サルタの顔に目玉焼きが張りついている。
ゴドー「…どうしたんです。その顔…」
サルタ「聞け! 思い上がった、おろかな人間よ。あきらめて自分たちの星へ引き返すがいい」
ゴドー「…なんだって… 声はサルタ博士なのに…」
サルタ「そうだ。この人間の言語中枢をかりて忠告しているのだ。あのかたに歯向かうなど狂気の沙汰だ… あのかたは全知全能なのだぞ」
ゴドー「あのかたって… 2772のことかっ」
サルタ「そうだ。この宇宙には何者といえども、侵してはならない領域がある。それをむりに侵そうとするものには死があるだけだ。帰らなければ、まずこの男を、次におまえを殺す」
 と、天井に設置されてあったレイガンが作動し、サルタの頭に張りついた目玉焼きに命中する。目玉焼き、サルタの頭をはなれて、ゴドーに襲いかかってくる。
 ゴドー、素早くガンを抜いて、三つにわかれた目玉焼きを、次々撃ち落とす。
 コンピュータルームで、オルガが作動を開始したコンピュータに。
オルガ「ありがとう… スペース・シャーク… やっとゴドーを助けてくれる気になったのね」
 コンピュータ、活発に作動しはじめる。
 電磁砲、ミサイルなどの武器も砲門を開き、迎撃態勢に入る。
 クラック、プークスの口さきをつかんで引っ張り。
クラック「なおったぞーっ」
 ゴドー、倒れているサルタを抱え。
ゴドー「クラック、プークス、博士をベッドヘ!」
 ゴドー、コックピットの下部にある射手席にとびこんでかまえる。
 はるか前方に光点が見える。
 しだいにせまってくる光点。光を発する鳥の形になる。
ゴドー「こい、怪物め… これが最後の対決だ。見てろよ…」
 重戦車のような巨大な火の鳥。羽ばたきもせずに突進してくる。ぐっと肢をのばして、鋭いツメを突き出す。血走った目を開き、あいたくちばしから炎を吐き出す。
ゴドー「反物質転換砲、発射」
 撃ち出す反物質転換砲。
 火の鳥に命中。大爆発を起こす。
ゴドー「やった」
 爆煙の中を突っ切るスペース・シャーク。
 と、煙の中から光の球が飛び散り、スペース・シャークを追い抜いて、その前方に集結し、ひとつの強い光の球となり、変形して鳥の形になる。そのまま正面に向かって襲いかかってくる火の鳥。
ゴドー「そんなバカな」
 再び反物質転換砲をくらわせる。
 爆発する火の鳥。
 爆煙をさけて通過するスペース・シャーク。すぐあと、煙の中から光球の群がとび出し、周囲からスペース・シャークを追い抜いて、前方でかたまり、さーっと広がって鳥の姿に。スペース・シャーク、あわやその鳥に突っ込もうとして、危うく避けて飛び去る。
 ひと羽ばたきしてそのあとを追う火の鳥。
 たちまち追いつき、ぐっと肢をのばし、くちばしをつきだす火の鳥。スペース・シャーク、急反転して反物質転換砲をあびせる。
 爆発。その爆煙の中からとび出して来る光球。スペース・ジャーク、反転を繰り返しながら、次々と光球を狙い撃つ。すベての光球を撃ちつくして、一息いれるゴドー。
ゴドー「これでもう…」
 と、突然、目の前にすさまじい形相の火の鳥の顔がせまってくる。
 火の鳥、巨大な肢のツメをスペース・シャークの機体にうちこむ。
ゴドー「ウワーッ」
 衝撃でシートから放り出されるゴドー。
 火の鳥のツメガスペース・シャークの外板をはがしにかかり、じわじわとはぎとってゆく。ついに外板の一部をはぎとり、割れ目から機内の空気が流出、激しく吹き出す。
 吹き出す空気とともに、プークスが吸い出され、あっという間に巨大な火の鳥の口の中に飲み込まれてしまう。
 激しい空気の流れが、機内のものを吹きとばす。サルタも吸い出されそうになる。一瞬前、区画割りのシャッターが降りて、サルタ、シャッターに叩きつけられ、床に落ちる。
 駆けつけるゴドー。
ゴドー「博士!」
 ゆさぶってみる。
 ほうたいがとれて、血まみれのサルタが目を開いて、うめくように。
サルタ「ゴドー、あ、あいつの弱点が、わかったぞ°そ、それは… あ、あ…」
 ガックリとなって息絶えるサルタ。
 スペース・シャークを抱え込んだ火の鳥、くちばしでコックピットのガラスをつつく。
 何度もつつく。さしものガラスもしだいにひびが大きくなり、破れてくちばしがコックピットの中に突っ込まれる。流れ出すコックピットの中の空気。コックピットにいたオルガ、首を突っ込んできた火の鳥のくちばしに、とびつき、しがみつく。目をむく火の鳥。
 火の鳥、顔をあげ、激しく首を振る。しっかりとしがみついてはなれないオルガ。
 ふたたび首を振る火の鳥。オルガ、火の鳥の目をけっとばす。ひるむ火の鳥。オルガ、ジェット機に変身、すさまじい勢いで、火の鳥のアゴに一発体当たり。旋回して、こんどは、首をかっぽじる。
 転った火の鳥、オルガをワシづかみにしようとする。素早く逃れるオルガ。
 火を吐きかける火の鳥。オルガ、スペース・シャークの背ビレにかけた火の鳥の肢を襲う。火の鳥の肢、はがれる。
 宙返りして、もとのオルガに戻り、背ビレにつかまっているところヘ、火の鳥が顔をよせて、くちばしでつつきはじめる。
ゴドー「オルガーっ」
 と、火の鳥の肢のすさまじい一撃が、スペース・シャークの背ビレもろとも、オルガをふっとばす。
 火の鳥、ふっとんだオルガと背ビレに火を吐きかける。火に包まれるオルガと背ビレ、真っ黒こげになる。
 このありさまを見たゴドー。
ゴドー「コンピュータ、全砲門、2772に向けてぶっ放せ」
 スペース・シャークの残存全火器、いっせいに火を嘖さ、光線、電磁波を発し、ミサイルを射ち出す。
 スペース・シャークの集中砲火をあびて、のたうちまわる火の鳥。爆発の煙の中からいくつもの光の球となって逃げ出す。
 そのあとの宇宙空間には、黒こげになったオルガが身動きひとつせずに、漂っている。
ゴドー「オルガーっ」
 オルガ、スペース・シャークに収容される。
 床に横たわる真っ黒こげのオルガ。見守るゴドー。
ゴドー「オルガ! なんてこった…」
 身をかがめ、オルガを抱き、抱きしめるゴドー。
ゴドー「オルガ、オルガ、オルガ、オルガーっ、オルガーっ」
 驚いて見ているクラック。
ゴドー「オレにはおまえが必要なんだ。オルガ! オレはおまえを愛してる! そうだ、オレはおまえを愛してるんだ。今こそはっきりわかった… オレは、オルガを愛してたんだ」
クラック「プークスもピンチョも死んじまった。この船にいたら全滅だ。脱出しよう。そんな壊れたロボットなんか捨てて…」
ゴドー「うるさい! オレはオルガを直すためにここにいる。逃げたければ、おまえ一人で行け」
クラック「へッ、直すなんて無理だい。だいたい、あんな化物と戦うこと自体、ムチャだったんだ」
ゴドー「オルガを捨てていくわけには、いかない」
 はるかな宇宙に光。みるみる近づいて、恐ろしい形相の火の鳥となる。
クラック「また来たぞ。おいゴドー、逃げよう」
ゴドー「オレは行かん」
クラック「そうかい、とてもあんたとはつきあいきれねえや、あばよ!」
 緊急脱出艇に乗り込むクラック。
 大口をあけて襲いかかってくる火の鳥。
 オルガを抱きかかえて立ち上がるゴドー。
ゴドー「オルガ… 今、直してやるぞ」
 スペース・シャークを離脱する緊急脱出艇。と、目の前に火の鳥がせまっている。
 逃げようとする脱出艇、あっという間に火の鳥にくわえこまれ、のみこまれてしまう。
 オルガを抱いてサロンに入ってくるゴドー。
 そっとオルガを横たえ、壁に取り付けられたメカのボタンを押し、コードを引き出すと、オルガに接続し、修理しようとする。
 襲いかかってくる火の鳥。
 火の鳥のツメガ、スペース・シャークにかかろうとした瞬間、火の鳥、何か激しいショックにはねとばされる。
 体勢をたて直し、再度攻撃をかける火の鳥。
 機内では、ゴドーがいっしんにオルガの修理をつづけている。
 スペース・シャークにつかみかかろうとして、はねとばされ、苦悶の表情を浮かベ、のたうつ火の鳥。
 懸命にオルガの修理をつづけるゴドー。
 火の鳥、身もだえして苦しみながらも、気をとりなおして、スペース・シャークにいどみかかる。
 オルガの修理をつづけるゴドーの目から、一筋の涙がこぼれる。
 スペース・シャークにつかみかかろうとしている火の鳥、肢をけいれんさせ、激しくはねとばされる。身もだえし、けいれんしながらのけぞる火の鳥、しだいに姿かたちがやさしくなり、ふるえつつ漂う。すっかり小さくなった火の鳥、ゆっくり首をもたげ、うなだれ、静かに光を残して消えてゆく。
 背ビレをもぎとられ、万身創痍のスペース・シャークが、暗い宇宙空間に漂っている。

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